古典派シンフォニー

百花繚乱

 

フリードリヒ・エルンスト・フェスカ

Friedrich Ernst Fesca 1789-1826


 ドイツのマグデブルク生まれ。幼少期には音楽的な環境に恵まれ、両親の元、ピアノと歌を学びはじめます。M.ローゼにヴァイオリンを習い始めるとたちまちヴィルトゥオーゾとしての頭角を現し、生地を中心にごく幼いころからコンサート活動を始動。1804年にはコンサートツアーでマグデブルクに立ち寄ったシュポア(Louis Spohr)から、弦楽四重奏曲について「大きな才能を見ることができる」とのコメントを受け取っています。

 1805年にA.E.ミュラーに師事するためにライプツィヒに赴くと、ゲヴァントハウス管弦楽団の公演で作品が取り上げられるなど天才少年として注目されます。そこでフェスカの演奏を耳にしたオルデンブルク公から1806年に礼拝堂室内楽奏者として招待を受けますが、ここオルデンブルク公国はルイ・ボナパルトの支配するところとなり、1810年にはフランスに併合されてしまいます。その後フェスカは、もうひとつのボナパルト王国、ジェロームの支配するヴェストファーレン王国の首都カッセルのオーケストラに1807年転職を果たします。フランスの傀儡国家、ヴェストファーレン王国はわずかな期間しか存在しませんでしたが、この戦国の時代にあっても文化をおろそかにせず、オーケストラを保持していたということにある種の驚きを禁じ得ません。空席になった楽長候補にウィーンのベートーヴェンを指名し、ベートーヴェンもこの地への移住を本気で考えたという話は、彼の伝記に詳しいところです。

 カッセルでフェスカは、彼の死因ともなる肺病の症状に苦しめられるようになりますが、最初の2つのシンフォニーや、彼の代表作となる弦楽四重奏曲が書かれ名声が確立します。1812年には結婚をして子宝に恵まれ、二男アレクサンドルは後に有名なピアニストになっています。

 カッセルでの幸福な日々(最初のフェスカ伝を書いたF.ロホリッツの報告)も、ナポレオンの〈ライプツィヒの戦い〉での敗北により、ヴェストファーレン王国自体が消滅し終わりを告げます。しかし、フェスカは次なる職探しの準備に余念がなく、すぐにカールスルーエのバーデン大公の楽団の第1ヴァイオリン奏者のポストを得ることに成功します。

 フェスカは、この任務に就く前に弟に会うためにウィーンを訪れていますが、ここでシュポアと再会、再び激励を受けています。彼の最初のシンフォニーは、この機会にウィーンの出版社に買い上げられ、後に出版されています。

 当時精鋭の音楽家が集められていたカールスルーエでフェスカは、街の〈博物館協会(Museumgesellschaft)〉のオーケストラでも指揮をとり、「彼の栄誉は宮廷オーケストラばかりでなく、街の音楽生活にも欠かせない」と、市民からも暖かく迎えられました。出版社にも作品が求められ、批評も常に好意的でした。ヴェーバー(C.M.v.Weber)もエッセーの中で、フェスカの特に弦楽四重奏曲や五重奏曲を高く評価しています。しかし病気のため、カールスルーエでは思い通りの仕事ができず、1826年に37歳でその生涯を閉じました。

【F.E.フェスカの肖像画】


[フリードリヒ・エルンスト・フェスカのシンフォニーを聴く]

シンフォニー 第2番 ニ長調 作品10


 この作品の正確な作曲年代は明らかになっていませんが、1813年の前半にカッセルで演奏されたことが分かっています。

 第1楽章はポコ・アダージョの序奏から始まります。木管が長調を、弦楽が短調を奏でる楽器群間のコントラストの美しい音楽。

 主部が始まると、ニ長調らしい爽やかなテーマが流れ出します。この楽章の命は流麗さと云えるでしょう。第1主題も第2主題も共に晴れやかなテーマで、展開部でも流れを失わせるような不必要な力みはなく、常動曲のように動き回る8分音符に乗って軽やかに曲が進行してゆきます。

 第2楽章は、まずオーボエにより伸びやかなロマンスが奏でられます。クラリネット、フルートが加わり美しい木管アンサンブルがそれに続きます。第2主題をつかさどるのは弦楽器。こちらも歌にあふれた叙情的なテーマです。後半は前半部分の再現となりますが、各々のテーマが穏やかに展開されています。

 第3楽章はニ短調のスケルツォ楽章。焦躁感に駆られるようなメランコリックな主部と、牧歌的なトリオ部との対比がみごとです。

 第4楽章は8分の6拍子のロンド-ソナタ形式。メカニカルなテーマは快活で愉悦感にあふれたもの。ここでも主題間の性格の違いは著しくなく、流れが優先されています。それでも、展開部ではテーマが短調で対位法的に展開されたり、花火のような上昇音形が華やぎを与えたり、聴くものを飽きさせることはありません。

 全曲を通して、フェスカの創意工夫に感心させられるばかり。締まった形式と叙情的な歌謡にあふれた旋律が、生き生きとしたリズムに乗って奏でられる、これは特筆すべき名シンフォニーです。

(2015.12.3)


【関連動画】

F.E.フェスカ: シンフォニー 第2番 ニ長調 作品10

北ドイツ放送フィルハーモニー管弦楽団、フランク・ベールマン(指揮)